2005-01-01から1年間の記事一覧

"lyrical"

東京の夜。 真っ暗な道と明るい空。 仕事帰り、それと、買い物をして両手に荷物を持ちながら ぼうっと歩いたときに。 小さな教会の前、階段のふたり。 色気もなく涙を流すように葉を落とすいちょう。 丸くなって目を細める、太った猫。 黄色く咲くあの花。 …

“コルセット”

夜、ひとり運転する車だって退屈じゃありません。 たとえ、通るルートが朝のそれと同じでも、 暗闇と照明ばかりの単調な構図でも、 違う気持ちで満たされているのですから。 「あの長い橋をわたる時に広がる景色で、 今日の思い出を終わりにしよう」 姿を現…

臆病な犬

もっと優しくしてほしいとか、もっと我慢してほしいとか。 他人の心をどうにかしようなどと考えるのは、 とても図々しいことです。 けれども、僕の心は容易くどうにかされてしまう。 言葉は無くても、 例えば、あなたの長い睫毛が物語るから。 図々しさの欠…

黄色い花

目を閉じれば、 すべてが思い通りの夢。 まぶたの裏に甘く焼き付ける。 されど、眠りの中の物語は、やがて色褪せるでしょう。 目を開けば、 僕の見る現は、泣いている?笑っている? そっと、この腕の中へ。 不安だって丸ごと抱きしめられるのです。 だから“…

あの丘

車を降りて、林に囲まれた砂地を行きます。 視界が開けると、そこにあった丘が僕らを天へと導く橋に思えたので、 一息つく間にそれをしっかり脳裏に焼き付け、そして、再び踏み出しました。 駆け抜けたい気持ちはあったけれども、冷たい風に抑えつけられ、 …

“暗闇の天使”

「気に入ったクラウンの首飾り」 憧れを誇るようにぶら下げる。 あの日欲しがった物はみんな手に入れたのに、 どうしてでしょう。 不安は消えません。 鏡に映る自分。 僕以外の何者でもない。それは認めたくない姿でした。 それを知られるのが怖いから、人前…

彼岸

空に架かるあの橋を虹と言うのは知っています。 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色の輝きを放つものとして皆には見えると聞きますが、 僕にはそれがわからず、灰色の放物線として目に映ります。 皆は「あの虹色が見られないだなんて可愛そう」と言います。 …

"Stand By Me"

あなたの笑う顔が、笑う声が見たい。 でも、どうすればいい? 僕のお馬鹿な失敗談でも語れば、笑ってくれますか? 数え切れなかった星空のことを思い出せば、笑ってくれますか? あの歌にあるように、「心配無いよ、大丈夫だよ」とは、 −まだ−言えないし、 …

“赤と黒”

悪意は連鎖する。 冷静な時なら、嫌なことをされても 「ああはなるまい」と、反面教師にできるけど それでも中々そうはいきません。 舌打ちのひとつでもして、どこかに怒りをぶつけようとしてしまいます。 一方、善意は。 happyな人を見ると、こちらもhappy…

“月がこぼれそう”

空を見上げれば月がある。 どうしようか。 僕にとって、いつでも月は綺麗なものだから、 「今日“は”月が綺麗ですね」 と言うのでは不適当ですし、 だったら代わりに、 「今日“も”月が綺麗ですね」と言えば 何回でも使えるからいいと、おっしゃるかも知れませ…

“「知らない」の増殖”

知れば知るほど、「知らない」が増殖します。 手紙を読めば、未だ知らぬ顔を見て、 写真を見れば、未だ知らぬ声を聴く。 そうやって欠片を拾っても、 完成に近づくどころか遠のいていくようです。 けれども落胆はしていません。 美しい世界が垣間見えたなら、…

ソワレ

隣の町の、一等大きな劇場であなたは歌っていて、 それは今も昔も変わらず。 ただ、僕のほうから離れただけ。 嫌いになったわけではありません。 ますます名声と富を得たあなたの噂は、 何処にいたって耳にします。 僕はと言えば相変わらずで、 宛てのない手…

"蝶になったあの日から"

あの丘に咲く、孤高の二文字が似合うガーベラ。 その名は「シェリー」。 たった一厘だけ、寂しそうに楽しそうに咲いている。 毎晩、それはそれは美しい声で歌うので、 生き物たちは、けっして近づけないそのガーベラの 明るくはないけれども心地よい歌を聞い…