2008-01-01から1年間の記事一覧

『四月』

藤棚が色づき始める頃になると思い出します。またこの季節が来たんだね。 賑やかな花も好きだったけれど、それより冠のように景色を飾る藤のほうが、あなたは好きでした。 ずっと見守っている、とさよならの代わりをあなたが最期に言ってからも時は進みます…

『スケッチ』

一年にたった一度、二度と来ない秋が始まる。ここでしか生まれない季節。一期一会。大切にしたい。 水曜日の朝。黒猫のカーテンを開ける。窓の外。 仰ぐ灰色の空。小雨降る。しとしと、と。水たまりがちらほら目に映る。 制服に着替えた。朝ごはんを食べた。…

『路上の十字架』

電柱の無骨さがたまらなく格好よい。 真っ直ぐに立つコンクリートの円柱、見通せぬ中は空洞。等間隔に打たれた作業用の杭、登り手は居ない。てっぺん近くの十字から双方向に各々五六本伸びるケーブル。雀が停まっていると尚よい。背景は透き通った青でない、…

『かおり』

バレエシューズが好き。お店の棚に色とりどりに並べられている、丸いつま先のぺたんこの靴。甘く光るM&M'sみたいで、手のひらに乗せたくなる。リボンが付いていると尚いい。但し、ダンスに使うのじゃなくて、外履き用の。 でも、私は背が低いくせに足ばかり…