2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『時計の針』

別れ際、あなたはそっと目線を落として溜め息をつく。 「帰りたくないけれど、帰らなきゃ」 手は握ったまま。 哀しいけれど、嬉しい。 嬉しいけれど、哀しい。

『くちづけ』

部屋に入ると、先を行く君は黒いジャケットをハンガーに掛け黒く細長いネクタイを緩め、ベッドに腰掛ける。 私は左胸にデフォルメされた髑髏の刺繍が入ったボタンダウンの白いブラウスと緑を基調としたチェックで膝丈のプリーツスカートという、学生服を意識…

『夜明け』

あの朝、雲の欠片が 零れ落ちて、百合の花になる 左手、胸において 昨日までとまるで違う世界、感じる 僕は歌になって、すべてをメロディにのせて そして、舞い落ちよう 少しも報われなくとも

『カノン』

ステンドグラスの窓から差し込む陽の光を背にして、白いドレスを着たあなたがゆっくりと手摺にやさしく手をつきながら階段を降りてくる。そして言う 「おはよう」 いつもと変わらない、でも、いつもより愛おしくなる声で僕に微笑みかける。 毎晩、一緒に眠る…