あの丘

車を降りて、林に囲まれた砂地を行きます。
視界が開けると、そこにあった丘が僕らを天へと導く橋に思えたので、
一息つく間にそれをしっかり脳裏に焼き付け、そして、再び踏み出しました。
駆け抜けたい気持ちはあったけれども、冷たい風に抑えつけられ、
ゆっくりと歩みを進めるしかありません。
隣では友人が、靴や口に砂が入ったとか、寒いとか文句を垂れます。
僕はブーツにマスクと、事前に備えていたので、お構いなし。
そんなことより、ついにやって来た憧れの地を味わっていたのでした。


ここが、あなたが訪れたという砂丘


橋の頂点を過ぎると海が見えてきました。
これは天国へ至る道なんかじゃないと、
わかっていたことながらも、ちょっとがっかり。
波打ち際では、恋人たちが何処かで見た映画を
再現するかのような遊びをしていましたが、
僕はすぐに目を逸らしました。
不快だから、ではなく、目的はそう、砂のほうだから。


振り返って気づくこと。
次々にやってくる人々。ほとんどは、はしゃぐ間もなく去ってゆく。
相変わらず強い風は、足跡をゆっくり消してゆきます。
何かを守りたくて、追い出しているかのように。


きっと、あなたのファンなのですね。